税制改正と実効税率

実効税率の算定は面倒くさいですね。
特に、今回は復興特別法人税の影響で更に複雑になっています。
実際に、実効税率を手順を踏んで算定してみました。


『個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針』の第37項に、算定式の意味の解説があります。


『個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針』


どこの税率を採用するかも、同項に記載されています。
なお、ここでいう事業税には地方法人特別税が含まれています。
地方法人特別税は、事業税と同様に損金算入され、標準税率に基づいて計算した事業税額を課税標準としています。

実務的には、一時差異等が解消又は消滅する際の将来の各会社の法人税、住民税及び事業税の各適用税率を合理的に見積もることが必要となるが、将来の所得水準を考慮し、複数の事業所を有する会社においては、代表的な事業所(例えば、本社所在地、主な所得源泉地)に適用されている税率をもとに法定実効税率を算定し、税効果会計の適用税率とする。
したがって、標準税率が必ずしも法定実効税率の算定基礎になるとは限らない。

(例)
・資本金1億円超の普通法人(外形標準課税あり)
・本社:大阪市

1.税率を確認する
(1)法人税率:25.5%(平成24年4月1日以降開始事業年度)
  復興特別法人税法人税額の10%(平成24年4月1日以降開始事業年度から3年間)
(2)府県民税(法人税割):6.0%(超過税率)


  法人府民税・法人事業税・地方法人特別税(大阪府)


(3)事業税(所得割):3.26%(超過税率)→標準税率2.9%
(4)地方法人特別税:148%
(5)市民税(法人税割):14.5%(超過税率)


  法人市民税(大阪市)


2.実効税率の計算
(1)復興特別法人税がある期間
(25.5%×(1+10%)*1+25.5%×6.0%+3.26%+2.9%*2×148%)÷(1+3.26%+2.9%×148%)=37.96%
(2)復興特別法人税がない期間
(25.5%×(1+6.0%)+3.26%+2.9%×148%)÷(1+3.26%+2.9%×148%)=35.59%



(例)
・資本金1億円以下の普通法人
・本社:大阪市

1.税率を確認する(上記と同じホームページ)
(1)法人税率:25.5%(平成24年4月1日以降開始事業年度)
  復興特別法人税法人税額の10%(平成24年4月1日以降開始事業年度から3年間)
(2)府県民税(法人税割):5.0%(法人税額は2,000万円以下とする)
(3)事業税(所得割):5.78%(超過税率)→標準税率5.3%
(4)地方法人特別税:81%
(5)市民税(法人税割):12.3%


2.実効税率の計算
(1)復興特別法人税がある期間
(25.5%×(1+10%)+25.5%×5.0%+5.78%+5.3%×81%)÷(1+5.78%+5.3%×81%)=38.64%
(2)復興特別法人税がない期間
(25.5%×(1+5.0%)+5.78%+5.3%×81%)÷(1+5.78%+5.3%×81%)=36.33%


ちなみに、私は大阪府民・市民ではありません。 

*1:復興特別法人税の10%はその名のとおり法人税のみに付加します。

*2:地方法人特別税は、事業税所得割が超過税率の場合でも標準税率に乗じて計算します。