簡易合併の可否(その1)

合併というと買収手段として頻繁に用いられているイメージがあるかもしれませんが、多くは親子間の合併や兄弟間の合併などグループ内再編が多いのではないでしょうか。実際、適時開示を見るとこのパターンが圧倒的です。
いきなり今まで資本関係がなかった会社を合併で丸抱えするというのは抵抗があることでしょう。


さて、合併で消滅する会社の規模が存続会社に比べて一定以上小さい場合は、存続会社の株主総会の承認を省略できる簡易合併によることができます。面倒な株主総会の承認を省略でき機動的に取締役会で意思決定ができるので、上場会社が子会社を合併する場合にもよく用いられています。


ただし、消滅会社が債務超過の場合、あるいは合併差損が生じる場合などは、簡易合併によることができず、原則どおり株主総会の決議が必要となります。


ここで、簡易合併を行いたいばかりに、親会社が子会社の増資を引き受けて債務超過を解消すれば簡易合併できるでしょうか。


親会社Aの子会社株式簿価が100、100%子会社Bの資産100、負債150で△50の債務超過とします。
BがAに対して50の増資を行うと、Aの子会社株式簿価は150、Bの資産は50増加し純資産は0、Bの債務超過は解消されます。
ここで合併すると、Aの受け入れ仕訳は、

(借)資産            150  (貸)負債         150
   抱合わせ株式消滅損  150     子会社株式      150

結局は、合併差損が生じるので、親会社が子会社の増資を引き受けて債務超過を解消しても簡易合併はできません。


合併差損が生じるかどうかは、効力発生日の前日の資産・負債を受け入れるので当該日の財務数値で判断します。
もっとも、子会社が債務超過でない場合は、親会社が子会社の純資産額相当まで子会社株式を減損したうえで合併すれば、合併差損は回避され簡易合併は可能と思われます。


親会社Aの子会社株式簿価が100、100%子会社Bの資産100、負債50で純資産が50とします。
このままだと、合併差損が生じてしまいますが、子会社株式を50減損した場合は次のようになります。

(借)資産       100  (貸)負債      50
                     子会社株式 50


もっとも、親会社Aのほうでは、子会社株式評価損50を計上することにはなりますが....。